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文化・メディアが生み出す排除と解放

文化・メディアが生み出す排除と解放 (差別と排除の[いま]) (差別と排除のいま) 文化・メディアが生み出す排除と解放 (差別と排除の[いま]) (差別と排除のいま)
荻野 昌弘

明石書店  2011-07-29
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「差別」にまつわる報道は今も昔も存在する。差別的な表現や言葉を発しただけでもニュースに取り上げられたり、謝罪、あるいは辞任に追い込まれるような報道まである。たった一言で人は傷つけられることはあるのだが、私はあきらかに「言葉狩り」を既存メディア主導で行っている感が拭えず、メディアそのものの「ジャーナリズム」を疑ってしまう。
メディア観に関してはここまでにしておいて、本書では文化やメディアで取り上げられる「差別」の歴史とあり方について論じられている。

1章「食とマイノリティ」
「食による差別」
宗教的なタブーがあまりない日本ではあまりピンとこないが、宗教によって食べることを禁じている。タブーと言えばカニバリズムくらいかもしれないが。
本書は食にまつわる「差別」について書かれているが、ホルモンなど私でも食べたことのある、また本章で取り上げられている「油かす」も食べたことがある。
いずれも部落の食材としてあったのだが、それが高度経済成長あたりにメジャーなものとなり、現在では私のように、そうであったことすら知らない人も多い。

2章「蘇り、妖怪化する歌、「お富さん」をめぐって」
「死んだはずだよお富さん」
この曲は1954年に春日八郎が歌った「お富さん」である。今から50年以上前に発売された曲であるが、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」などにも取り上げられたこともあり、私でも最初にある歌詞だけなら知っている。
もっともこの曲が発売されるやいなや大ヒットとなり、子供の間でも「お富さん」を口ずさんでいたという。
本章では大ヒットした「お富さん」の誕生エピソードとその時代背景について考察を行っている。

3章「スポーツと差別」
本章のタイトルをみると1968年のメキシコシティーオリンピックの陸上男子200mのことを取り上げているのかと思いきや、2009年8月に開催されたベルリンの世界陸上で南アフリカの女子選手が金メダルを獲得したが性別確認検査を受けインターセックスであることが発覚し、話題となったことを取り上げている(メダルの剥奪は無かった)。

4章「差別・排除を助長する/回避するインターネット」
差別や排除とインターネットは切っても切れない関係と言える。既存メディアは差別的な発言をするだけでも「失言」や「抗議」事となるが、インターネットは匿名性も相まってかそういったことは殺人予告などよほどのことがない限り取り沙汰されるほどではない。
しかしそれは助長されるものとして扱われるが、回避する方法としてのインターネットもあるという。私自身インターネットを多々利用するが、差別などを回避する、というのは考えにくい。
それはともかくとして本章では差別とインターネットの関係性について考察を行っている。

5章「障害者表象をめぐり"新たな自然さ"を獲得するために」
障害者と一括りにしても様々なものがあり、差別的な言葉もある。しかし最近では「障害者」という言葉そのものも「差別語」ではないか、という指摘もある。
差別的な表現はメディアでもタブーの表現としているのだが、かつて差別的な表現を使っていることについての考察を行っている。たしか現在では様々な歌手によってリメイクされている美輪明宏氏の「ヨイトマケの唄」も差別的な表現から日本民間放送連盟で放送禁止歌の対象にされていたことについて、本章を読んで思い出した。

6章「<マンガと差別>を考えるために」
障害者ではなくとも国による差別をマンガなどの媒体でも扱われることがある。本章では「はだしのゲン」をはじめマンガで表される差別的な表現について論じられている。

「差別」に関する本では必ずこのことを言っている。「差別はなくならない」と。それは人間以前に動物として生活している以上動物による様々な「差」が生じている。人間にも国や性格など「違い」が細部まであることからそのことによる「差」が必ず生じる、そこから「差別」という言葉ができあがる為である。
差別はなくならない以上、「差別」といかにして付き合うかが大切である。差別的な表現と同様に言葉などの表現はどうあるべきか、本書はそれについて考えさせられる一冊である。

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