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家族という視点―精神障害者と医療・福祉の間から

家族という視点―精神障害者と医療・福祉の間から 家族という視点―精神障害者と医療・福祉の間から
滝沢 武久

松籟社  2010-10
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本書は精神障害者を持つ家族を医療や福祉など様々な観点から描いた一冊である。21世紀は「心の世紀」と呼ばれるが如く、精神障害者を抱える家族は増えていくことだろう。その中で普段ある生活に戻すためには、もしくは、精神障害とのつきあい方をどうしたらよいのか、本書は精神障害者を抱える家族のライフストーリーを基に、精神障害について、そしてそれに対するケアに至るまで考察を行った一冊である。

第一章「精神科医療との出会い」
本書は著者自身の家庭で起こった実話である。父の死をきっかけに著者の兄が「神経衰弱」で入院してした。そのことがきっかけとなり、精神障害に関して関心を持ち始めた、持ち始めざるを得なかったと言う方が正しいかもしれない。
当時(昭和30年頃)、「精神病」に対する認知はあまりなく、むしろ野獣扱いされる始末だったという。当時の背進化病院は刑務所のように木の格子があり、患者はその中で入院生活を送るそうである。

第二章「家族として、ソーシャルワーカーとして」
兄の精神病により、精神病に関しての疑問が長年続き、やがて、精神科病院に勤務するようになった。精神科病院での修業時代などをつづっている中で「ライシャワー大使事件」の後にでてきた「精神医学論争」も取り上げられている。40年以上も前の論争であるが、形や規模は違えど、現在も同じような論争が行われている。

第三章「「精神障害」から何を学ぶか」
民間で初めて「精神科リハビリテーション」ができた川崎市社会復帰医療センターに勤めたことについて、そして精神病を抱えた兄の最期について生々しく綴っている。
その中で当時の精神病患者に対する労働環境についても指摘している。現在では度重なる崩壊性により「精神障害者」でも働ける環境が整備されてきている。しかし兄が存命だった時代は精神障害は単なる「病気」として扱われる。労働安全衛生法(第68条)により労働が禁じられていた。
第四章「精神障害をめぐる歴史と制度」
精神障害の歴史については当ブログで紹介した「やさしい精神医学入門」を始め、精神医学の歴史に関する文献が多いため、ここでは割愛しておく。
もっとも本章では「刑法39条」について少しふれる必要がある。刑法39条は

「1.心神喪失者の行為は、罰しない。
2.心神耗弱者の行為は、その刑を減刑する。」

と記述されている。つまり精神的な疾患によっては刑が軽くなったり、無罪となったりする事があるのだという。精神障害が増加していく今、法律、及び社会的な議論が活発になっている。本章では精神障害者の犯罪率の低さ、さらにその人たちが無罪になるよりも有罪になる人が多いといいう現状について言及している。この議論は非常に難しく、ましてやそう言った人たちによる事件を大々的に取り上げるメディア、さらにはそれに乗じてしまう私たちにかんしても考える必要がある。

第五章「家族会運動の役割」
ここでは著者が推進している運動の一つである「家族会運動」について焦点を当てている。簡単に言うと精神障害者を持つ家族同士が様々な考え、ノウハウを共有することにより、家族だけで悩みを抱えることを無くす。ひいてはそのことによって少しでも負担を減らしながら、精神障害とのつきあい方と対策を模索していくという形である。
精神障害をもつ苦しさを持つもの同士だと、それ以外の人たちと話すことよりわかりあえることが多い。そのことにより、精神的な負担や自立への苦労も和らげられる所からして、役割は大きいように思える。

第六章「家族の抱える困難」
精神障害者を抱える家族には様々な困難がある。本章では法律とともに論じられているが、精神障害にかかるとまず、家族から隔離され、強制的に精神病院に入院させられるケースがあった。最近では患者の意思で入院するかどうか決められる「任意入院」となり、それがなくなった。しかし精神病院に入院することにより金銭的な負担も強いられるだけではなく、周囲の目も冷たくなってしまうと言う困難もある。

第七章「暮らしを取り戻す」
大学における精神医学の研究の規模が減少し、精神医学研究に当てられた場所もゲノム研究に代わってしまったという大学があるという話を聞いたことがある。
精神医療は進んでいるものの、治療後のケア、精神障害を克服し、社会的に「自立」できる環境がまだ整っていない現実もある。精神医療は進んでいるとは言え、まだまだ課題が山積しているという他ない。

著者の実体験が伴っているせいか、「精神障害者」の抱える家族の現状が生々しく伝わってきた。そのことにより、精神医学の現状、「精神障害者」について私たちはもっと考える必要があるというのを色濃く認識させられた一冊と言っても過言ではない。

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