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リスクに背を向ける日本人

リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書) リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)
山岸 俊男 メアリー C・ブリントン

講談社  2010-10-16
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本書を紹介する前にこの質問を投げかけたい。
「皆さんは「リスク」をどう思っているのか。もしその「リスク」のある状況に挑みたいか、それとも避けたいか」
その質問を投げたかったのには大きな理由がある。本書と通じるところがあるのだが、私たちの場合はたいがい、「リスクは避けるべき」という考えを持っている。その一方でアメリカなどではリスクのある道に突き進む人が多い。
日本人特有の傾向なのであるならば、なぜそのような傾向になってしまったのだろうか。本書は日米を代表する日本社会の研究者二人の対談で日本人特有の現状について迫りつつ、これから日本はどのような道に進めたらよいのかについて提言も行っている。

第一章「日本を覆う「リスク回避傾向」」
本章の最後にある「世界価値観調査」の「自分は冒険やリスクを求める人」という質問があり、それが当てはまらないという人は先進国・発展途上国併せて48カ国の中でもっとも高かった。

第二章「はしごを外された若者たち」
最近では「貧困」や「格差」、さらには「ワーキングプア」などが蔓延している。それに伴って深刻化しているのが、お金では表すことのできない「希望格差」である。日本人特有の勤勉さが失われ、それとともに働く意欲、レベルが低くなり、優秀な外国人が大量に雇われ、雇用する宛がなくなり、無気力化してしまった。
要因の一つとして、日本の雇用形態の変化やコミュニティの希薄化、さらには学校や企業単位のサポートがなくなってしまった、つまり「はしごを外された」状態となってしまった。

第三章「どこで自分を捜すのか?」
バブルが崩壊してから言われ始めたのかもしれないが、「自分探し」というのが使われ始めた。元サッカー日本代表の中田英寿もドイツワールドカップ以降、代表、そしてサッカー選手を引退し「自分探しの旅」と銘打って、世界中を放浪する旅に出ているという。
一時期ポジティブに使われていた「自分探し」であるが、その言葉に関して批判的な論者もいる。
日本では「自分探し」というのがもてはやされているが、アメリカでは「トライ&エラー」が使われているのだという。チャレンジをする、その中で失敗があるが、失敗から新たなものを学び、次のチャレンジに結びつけるというものである。

第四章「決められない日本人」
日本人には優柔不断な人が多いというのだろうか。むしろ縦社会にいる宿命なのだろうか、決断を上司など他人に降り、自らは責任を逃れるということが常としてある。自ら決められるのはたいがい、買い物や食事の注文くらいとなってしまっている。

第五章「空気とまわりの目」
日本人は協調や調和を重んじる社会といえる。それを象徴する言葉として「空気を読め」という言葉がある。しかし私は「空気を読め」という言葉が大嫌いである。「空気」というのはそもそも無機質なものであるのにも関わらず、あたかも空気が「独裁者」のように扱われているからである。
本章では他にも「いじめ」や「質問」など「空気」にまつわることについても言及している。

第六章「なぜ日本人は子どもを産まないのか?」
日本では「少子高齢化」が叫ばれているだけではなく、結婚も晩婚化が進んでいる。さらには結婚相手に巡り会えないということで「婚活」が出てきており、昨年は社会現象にまで発展した。最近では「非モテ」や「非婚」という言葉も出てきている。
その背景には「内向き」や「ひきこもり」というのがある。

第七章「グローバル化の意味」
格差や貧困が深刻化しているのか、昨年・一昨年とプロレタリア文学とマルクスの「資本論」に関する本が大量に出版された。とりわけ小林多喜二の「蟹工船」は80年以上前の作品であるにも関わらず爆発的に販売部数を伸ばしたとされる。
リーマン・ショックやサブプライムローンの焦げ付きにより資本主義のあり方が揺らいできており、マルクスの掲げる社会主義に関して共鳴したと言えるのだろうか。
しかしアメリカでは先行き不安な状態でも楽天的であるのだという。アメリカではないが、私が以前カナダに行った時、ちょうどイラク戦争やSARSの事がネックになっていたが、そのことに関して気にしていなかったと言うことを今でもはっきりと覚えている。

第八章「女性の能力を生かすには」
日本で、女性が活躍できる場は1985年の男女雇用機会均等法が施行された後、改善しつつある。しかし日本独特の風潮なのだろうか、未だ男女にまつわるポジションのあり方について進展はなされていない状況にある。

第九章「ジャパン・アズ・ナンバースリー」
日本はGDPでは世界第二位のポジションにいたのだが、中国の急速な発展によりその座を明け渡すのは時間の問題であるという見方が強い。やがて世界第三位になる日も近いと言われている。世界第三位になるといってネガティブになる必要がない。順位はあくまで比較因子でしかなく、それだけで一喜一憂したりするのは滑稽としか言いようがない。それ以上に日本には経済としても社会としてもやる必要がある。その一つが「行動すること」だと著者らは言う。

日本人は「内向き」「シャイ」といった傾向が強い。
江戸時代に「鎖国状態」にあったのだが、これは中国でも長年対外諸国との関係を絶ったのと同じことである。ほぼ同じ時期に鎖国が解かれたが、経済としてはもはや拮抗している。それどころか最近では中国が勢いづいている事実がある。日本もかつては高度経済成長で活気づいたときがあり、その息切れという人もいる。しかし対外諸国への鎖国はあったのだが、自分以外の誰かという所で心的な「鎖国」があるのではないかと本書をみて思った。その鎖国を解くためには自らその鎖をぶち破ることにあるのではないだろうか。

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