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自殺予防学

自殺予防学 (新潮選書) 自殺予防学 (新潮選書)
河西 千秋

新潮社  2009-06
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日本では毎年3万人もの人が自殺をしている。とりわけ多いのが借金での金銭問題、労働状況による過労自殺、人間関係の縺れからによる自殺が挙げられる。心的、金銭的、物的観点から、様々な理由から自殺をしていくためどのように対策を立てるべきなのかというのは一概に語ることは非常に難しい。本書のタイトルは『自殺予防学』であるが、あたかもそういった学問が存在するのかと考えてしまう自分がいる。一昔前からそういったことが社会問題と化しているだけに、である。本書は様々な観点からみた「自殺」についての考察を行い、それを踏まえたうえでどうしたらいいのかという提案を行った一冊である。

第1章「自殺とは何か」
本章の冒頭に書いてあるとおり、「自殺」の定義というのは難しい。
たとえばリストカットとしても不慮の事故により手首の動脈を切ってしまい死んだというケースも存在する。崖に落ちて死ぬというのもまた然りである。
自殺というと自ら望んで死ぬと言われているが、その中で遺書を遺しており、はっきりとした意志が明確となっていない場合「自殺」と「不慮の事故」という線引きは難しい。現に自殺者数はどのようにしてはかっているのかというのも考えるべき一つなのではないかと思う。

第2章「自殺の本質」
自殺における話というのはたくさん存在しており、中には「迷信」とも呼ばれる俗説も存在する。例えば、
「自殺は若い人が多い」
「自傷や自殺未遂は狂言みたいなものだ」
「自殺を止めることは不可能だ」
「自殺は予防することができない」(p.35より抜粋)
というのがある。「若い人が多い」というのは明らかな俗説であるが、40・50代の中年層がもっとも多く、19歳以下の若者がもっとも少ない。これは労働における過労自殺や、これから働く意味、生きていく意味を見いだせなくなり自殺に追い込まれる人が多くなったという表れといえる。

第3章「自殺問題の現状」
自殺が起こる要因というのは様々であるが前章で記述したこと以外にも、癌などの重病によりこれ以上長生きできないと言う絶望感を抱えての自殺というのもあるという。
ほかにも要因はあるものの、その根底にあるのは「心理」や「精神」が関連している。

第4章「自殺とマス・メディア」
「報道加害」という本が岩波新書であるのだが、過熱する報道、「メディア・スクラム」によって当事者自身が精神的な病に陥り自殺するケースというのがある。最近ではインターネットの普及に伴って、その被害というのは加速化して言っている(誹謗・中傷も存在する)。
TV局では自殺報道などを防ぐためにガイドラインをもうけているが、それが効果があるのかというのは疑わしい。
また報道に限らずドラマなど殺人や自殺と言ったものを取り上げているが、それは最後に語ることにする。

第5章「自殺と精神疾患」
精神的な病における自殺というのも最近多くなった。「21世紀は心の世紀」というが如く、うつにおける自殺や疾患というのは年々増加の一途をたどっている。精神科医の需要もそれにつれて増加しているが「医師不足」という現状からか追いついていない。

第6章「精神生物学からみた自殺行動」
ここでは自殺行動を「精神生物学」という危機なれない学問によって分析を行っている。「精神生物学」はどちらかというと「生物学」の傾向が強いように思える。

第7章「自殺予防の方法論」
さて、いよいよ自殺予防の方法についてとりあげる。自殺を予防するためには自殺を思いとどまらせることをしなくてはならない。本性で取り上げられている代表的なものとしては富士の樹海(「自殺の名所」として知られている)においてホットスポット対策、立看板を立てるというようなことを挙げている。心理学的、精神学的に、どのようにして思いとどまらせ、他人に悩みを打ち明けさせるのかというのが第一の課題とされており、試行錯誤を繰り返しながら様々な策を講じているところがよくわかるところである。

第8章「さまざまな自殺対策」
自殺を思いとどまらせるための対策は「カウンセリング」が主に挙げられるが、どのようにして「カウンセリング」をしていくのかというのもある。グループカウンセリングから、自殺予防のための対策、勉強会というのが本章で取り上げられている。

第9章「自殺に傾く人への対応」
自殺に傾きかけた人にはどうしたらいいのかというガイドラインが示されているが、これは抑うつの症状の人へのつきあい方に近い。相手に対しての接し方一つで快方に向かったり、自殺に追い込まれたりすることがあるため、普段のコミュニケーション以上に細心の注意を払う必要がある。

第10章「今後の課題、そして望まれること」
自殺対策は国単位で行われていないわけではないのだが、年金や景気と言った経済・福祉対策といったものが優先されており、二の次という位置づけになっている。労働対策や福祉対策に並んでとあれば最優先課題の一つとすることも可能であるが、今一つという印象が拭えないと言う現状もある。

第4章の最後にドラマなどにおける自殺について言及すると言ったが、これは昨年のドラマにおいて花嫁姿のまま自殺をするシーンがこの章で取り上げられていた。「自殺の美化」と主張しているが、そもそも戦前までは「切腹」など自ら自殺をすることによって禊ぎをするということがあった。ましてや自分の行った罪を死をもって贖うといった文化もあったことを考えると、「自殺の文化」というのも考察を行わなくてはならなくなる。
自殺を完全に予防をすることは不可能に近いが、最小限くい止めることは可能といえる。また「自殺」に関するメカニズムというのは解明されていないことが多く、多岐にわたった研究も必要であると本書を読んでそう思った。

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