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えんぜる―夢丸新江戸噺

えんぜる―夢丸新江戸噺 えんぜる―夢丸新江戸噺
三笑亭 夢丸 大友 浩

水曜社  2006-10-25
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噺家の三笑亭夢丸が公募落語大賞にて入賞された作品を演目にかけたという「夢丸新江戸噺」を収録した一冊である。
本書のそでに解説は書いてあるが、「夢丸新江戸噺」は古典落語の保護と創成を目指すために設けられた公募対象である。2001年から始まり、今年で8年経つ。
「夢丸新江戸噺」自体は初めて拝見することになるが、本書とともにCDも聞いてみたくなる(出回っているので買えないことはない)。
本書は10席取り上げられているが、江戸の風と味があるのだが、どこかしらか現代の感じもぬぐえない新しい「江戸落語」「古典落語」というような感じだったというのが率直な感想である。

<小桜>
吉原を舞台にした噺だが二人の関係のもどかしさが非常にくすぐられる噺だった。

<こころもち>
こちらは番頭と若旦那だけという不思議な噺。人情というか、商売のアドバイスというかその分別は付きにくい。とはいえ江戸噺の中では異端な噺といえる。

<昼神様>
「死神」という有名な噺をもじったのだろうか。日本には「八百万」といわれるほどたくさんの神がいるものだから、修行中という神様もいるのかもしれない。

<夢の破片>
「船饅頭」は江戸の海辺で売春をした私娼(公に許可を得ていない娼婦のこと)といわれているが、本書で上方の風俗だということを初めて知った。
そもそも江戸落語においても「船饅頭」はあまり聞かないため、女性が際立った噺の中でも非常に珍しく、かつ面白い。

<いろがたき>
こちらは実話をもとにした噺である。江戸の百姓と地主と若侍のドタバタ噺と言うべきか。

<椿の喧嘩>
いくつかの噺に出てくる「甚五郎」モノである。「甚五郎」というと本名は左甚五郎であり、実在した人物であり、伝説にも残る彫刻職人である。

<蛙の子>
「蛙の子は蛙」ということわざがあるのだがこの噺もまさにこれのことを言っているのかと考えてしまう。
しかし親子は親子であるが、親子の仲睦ましさを垣間見させる噺であり、落語でありながら心温まる形に出来上がっているのが凄い。親子連れの方々にこの話を聞かせたらどのような影響を与えるのだろうか知りたいところだ。

<ちぎり>
漢字で書いたら「契」というのだろう。
「契」というと男なもので女性との交わりといった邪なことを考えるのだが、本来の意味は「約束事」というのを一文字で表したものである。「契約」というのがいい例だろう。
この噺も小さいころから結んだ「契」を頑なに守ってきた男の物語である。本書でも紹介されているのだが、ある種「紺屋高尾」に似ている。

<大公望>
落語の演目の中には間男噺とう、いかにも「R-18指定」が出るような噺もある。ちなみに戦前の時に禁演落語に指定され、自粛対象とされた。戦後禁演が解除され今でも寄席やホール、CDなどで聴くことができる。
本書はそういった間男噺ではなく、あくまで2人の間の人情噺である。

<えんぜる>
最後は本書のタイトルである「えんぜる」。言葉の味わいが最も引き出ている噺である。これも人情噺ではあるが、どちらかというと「子は鎹(「子別れ」の下)」に近いものである。

本書は以上の10席がおさめられており、どれも珠玉の噺である。私としては本書でも十分堪能できるのだが、欲を言うと本書はCDを聞きながら読み進めていくと、もっともっと味わい深く読むことができるのではないかと思う。そう考えてみたら本書は「一石二鳥」なのかもしれない。

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