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人間を守る読書

人間を守る読書 (文春新書) 人間を守る読書 (文春新書)
四方田 犬彦

文藝春秋  2007-09
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タイトルからしてインパクトが強烈である。ちなみにこのタイトルは批評家ジョージ・スタイナーの「言語と沈黙」でとなえられた言葉だという。
読書というのは人それぞれであり、愉しみのために読書をする人、仕事や人生の目的のために読書をする人それぞれ違う。著者自身の読書観はこうである。
「多くの人たちが誤解していると思いますが、仕事や研究のために本を読むことは読書ではありません。私はこれを「調べる」と言っています。決して読んだとは言わない。その理由は簡単です。だって楽しくないから。仕事とは関係なく純粋に楽しみで読むのが読書の本当のあり方です。(pp.8-9より)」
著者は「愉しみ」で読書をしている。よく履歴書では「趣味:読書」と書く人も多いが、どのような本を読むのかというのが気にかかる。ただし、本当に読書が好きな人もいれば、ベストセラー本しか読まないと言う人もいるのであまりあてにならないが。
本書は読書の紹介であるが一味違った読書紹介となっている。第1章~第3章までのタイトルが「生のもの」「火を通したもの」「発酵したもの」とまるで料理を食べるかのように読書を紹介している。著者自身読書とは「料理を食べる」かの如く、日常的であり、かつそれぞれの味を吟味するかのように読書を愉しんでいるように見て取れる。
第1章「生のもの」
「生」という言葉にはいろいろ込められているのかもしれない。「生々しいもの」「生きているもの」などの解釈が可能である。しかし本章を見る限りでは確かに「生」というものが見て取れるが、はたしてどこの所に「生」を覚えるのか、著者自身はこれらの文献を通して「生」を見出すのだろうかというのだろうか。章のタイトルから本の羅列を見てとるのはなかなか難しい。
第2章「火を通したもの」
「生」であれば様々な解釈ができる。しかし今度は「火を通したもの」である。これは「炒める」「煮る」「焼く」というのがあるが、本章では補足を加えたり、ちょっと変わった解釈を入れてみたりと言ったところかもしれない。著者自身の解釈通りに紹介するのではなく、違った角度で解釈をしてみる。そうすることによって一味も二味も違ってくる。
実際に書評は一人一人違ってくる。ある人はこの角度、もう一人は別の角度から評している。同じ本でも受け方の違いというものがたくさんある。
書評の見比べの如く本章はいろいろな書評と読み比べしてみたら違いというのがわかるのかもしれない。
第3章「発酵したもの」
「発酵」というと微生物や菌を使って食品を製造することを指す。僅かな時間で発行する者もあれば、時間をかけてゆっくりと発行する者がある。特に後者は深みのある味わいになることが多い。発行というと好き嫌いはあるのだが独特の味わいで、それでいて深みが出ているという。本章では独特の表現の本、深みのある本を取り上げていると言って差し支えないだろう。
第4章「読むことのアニマのための100冊」
成毛眞氏が「読書は遊びである」と主張していたことを覚えている(成毛眞「本は10冊同時に読め!」p.72より)。著者は成毛氏に似ており、気の向くままに読書をすることを勧めている、というよりも目的をもって読書をすることを痛烈に批判している。
本章は「アニマのための」と書かれているが、これは、
「アニマの読書はたくさん読む。貪るように全世界を読み尽くそうとする。アニマの読書は、子どの時代に戻って、ひとたびに見失われた道をたどるかのようにして読むことである(p.261)」
と定義している。つまり活字中毒なほど読書好きな人のための100冊を案内している章である。100冊の中にはこれまでに取り上げたものはあるがそれもわずかしかない。なぜならば読書好きのために、一癖も二癖もある本を選んでいるのだから。
私の読書観は本書の著者と通ずるところがあるように思った。セミナーに参加しはじめてからビジネス書を読むようになったのだが、それまでは人文や社会科学といった一般書、専門書といったものを読むことが多かった。本職であるSEの本もあまり読まない。理由は簡単である。読書が好きだからである。ではこの読書に目的があるのかというと、目的はあるにはあるが、本当に言うと目的は、ない。あるという目的は「本を出すため」や「自己成長のため」といったものである。もともと書評をやるにしても、楽しい(苦しい時もあったが)から2年続けて来れた。
本書は読書案内であるが、著者の読書観と自分の読書観を照らし合わせ、自分の読書観を再確認できた一冊であった。

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