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観光人類学の挑戦―「新しい地球」の生き方

観光人類学の挑戦 「新しい地球」の生き方 (講談社選書メチエ) 観光人類学の挑戦 「新しい地球」の生き方 (講談社選書メチエ)
山下 晋司

講談社  2009-01-09
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学問で「観光学」や「人類学」というのはあるものだが、本書のタイトルにある「観光人類学」というのは初めて聞く。本書はこの「観光人類学」とは一体何なのかというのを述べつつ、「観光」における地球人としての生き方を考察していっている。
第1章「「新しい地球」の生き方を探る」
「グローバリゼーション」という言葉を旅行的観点から見ている。この「ブローバリゼーション」というのは90年代初頭から言われ始めた言葉であり、ちょうど冷戦が終わった時期なので「国際協調」という言葉がさけばれはじめ、これに伴って「グローバル化」というのが意識され始めたという。ただ政治的な背景が強く、国民意識の強い人たちにとって耳障りな言葉である。
第2章「越境する日本人女性――女たちのグローバル化」
今年は景気の後退により海外旅行に行く日本人は大きく減少するだろうがそれでも海外旅行に行く日本人はいると言っても差支えないだろう。本章ではその中での日本人女性にスポットを当てている。さらにその中からバリやカリフォルニアの事例をもとにグローバル化の真意について迫っている。
第3章「フィリピーナたちの夢――移民が普通に暮らせる日」
外国人労働者に関しては当ブログでも取り上げており、特に出稼ぎのため日本にきた外国人は様々な仕事、とりわけ製造という仕事につくが、そのうちフィリピン人にスポットを当てているのがこの章である。「ジャパゆきさん」や「フィリピン人婚外子国籍訴訟」がこの章で紹介しているところである。ただ私の固定観念というのか医療関係に従事する外国人女性がいるがとりわけ看護師はフィリピン人が多いというイメージがあるようだがそれだけではないようだ。
第4章「世界遺産という文化資源――バリ・白川郷・麗江」
上記の3つの世界遺産の事例を「グローバル化」を交えて紹介している。
第5章「熱帯雨林のアイロニー――マレーシア・サバのエコツーリズム」
「エコツーリズム(エコツアー)」というのはご存じだろうか。エコツーリズムとはその土地の生態系などの環境を維持しながらその文化や自然に触れるという農村滞在や自然探訪というような観光のスタイルである。本章ではマレーシアの東部にあるサバ州をモデルにしている。
第6章「「南」の観光歴史学――ミクロネシア・パラオにおける観光と植民地主義」
今までは東南アジアを中心に取り上げたがちょっと離れてミクロネシアと呼ばれる群島にスポットを当てている。本章ではパラオにおける観光について書かれているが、このパラオは昔は日本の植民地となった過去があり日本人が来ても日本語で対応できる。日本人がパラオへ観光に行く人数までは分からないが、戦争のこと、そして日本人が何をしてきたのかということがわかる(良い側面でも悪い側面でも)。日本史探訪の一つとしてパラオを挙げてみるのもいいだろう。
第7章「ロングステイ――暮らすように旅をすること」
数日間の旅行でなければ、永住でもない、数ヶ月間「旅行」として滞在する「ロングステイ」というのが本章で取り上げられている。日本という喧騒な社会につかれて海外へ長期間旅行し、自らを「癒す」というスタイルはおそらくこれから増えていくことだろう。
第8章「新しい地球、新しい日本――一つの世界に共に生きる」
外国人の日本で移住、逆に日本人が海外で永住する、もしくは前章のように「ロングステイ」をするというスタイルの幅が広くなる中、日本は諸外国と共に生きていくという風潮がある。いわゆる「グローバリゼーション」というのはまさにこのことであろう。
しかし世界が共に手を取り合い、仲良くやっていこうというほど危険なものはないと思うのは私だけだろうか。数千年にわたって数え切れないほどの戦争を行い、今更嫌悪な中となっている国々に対して「仲良くなりましょう」というほどお人好しにもなれないし、さらに国々の文化そのものを否定するという動きのある国だってある。「グローバリゼーション」というのは一見響きは良いものの、国々の個性を失うという側面もあるのではないかと私は思う。
「だから」と言っては難であるが、安易に「グローバル化」や「グローバリゼーション」というのは私としてはいけ好かない。ただし本書は観光の多様化、移民の多様化を教えてくれたということを考えれば決して悪い本ではない。むしろ、考えさせられる本であると私は思う。

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