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ひとすじの蛍火 吉田松陰 人とことば

ひとすじの蛍火―吉田松陰 人とことば (文春新書) ひとすじの蛍火―吉田松陰 人とことば (文春新書)
関 厚夫

文藝春秋  2007-08
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「尊敬する人物」と聞かれると、幕末の志士を答える人も少なくない。当然本書で紹介する吉田松陰も例外なく多い。吉田松陰を尊敬する人は多く、代表的な人では小泉純一郎や安部晋三などの歴代首相経験者も上げている。私も吉田松陰は尊敬する人物のひとりとしてあげている。
ではなぜ幕末の代表的人物でありわずか29までしか生きられなかった吉田松陰が未だに尊敬の念が絶えないのか。それは陽明学における知行合一を行ったこと。そして何よりも大和魂であろう。
本書は吉田松陰の生涯を綴っているが、その生きた時代の中での珠玉のひと言を交えている。
第一章「春」
21歳と言う若かりし頃の松陰を描いている。ここでは師匠となる佐久間象山との出会い、書物にふけるまでである。ここで一つ良い言葉をちょっと紹介する。
「吾れ平生、飲を貪らず色に耽らず、楽しむ所のものは好書と良友とのみ(p.74より)」
私は、飲食や女性には貪らず、良書を友人を楽しみにすることだけだと言っている。まさに私と同じだと言いたいところだが、飲食はパーティーで結構食べる人であるが、女性にはさしずめもてていない。本は好きだが友人はそれほど多くはない。と言う人なので、まだまだ私も修行が足りないなと。
第二章「夏」
1853年にペリーが4隻の黒船をひっさげ浦賀沖にやってきた。この前後に松陰は「猛」を発した。ペリー来航により他の国のことに興味を持ち、そして日本の刀の味を海外でも知らしめたいという野望に駆られていたときである。そのために松陰は友人と共にアメリカの船に乗り込もうとしたが未遂に終わってしまった。そのことを咎められ、野山獄に投獄された。ここでも一つ良い言葉を紹介する。
「衆人から蔑まれ、虐げられたときにこそ、真の英雄か否かが分かる(p.178より)」
このことばを見て、ある人の短歌を思い出した。
「願わくば 御国の末を 栄え行き 我が名を蔑む 人の多きを」
これは1945年の12月にミズーリ号で降伏文書を調印に赴くときの重光葵が書いた歌である。日本においてよいことを行うが、その中でも無鉄砲であったり、他人が嫌がることを率先してやりそれで蔑まれてはじめてその人の真の価値を見出すことができる。賞賛されてばかりではその人の真の価値は高いとは言えない。そのことを言っているのではないだろうか。
第三章「秋」
野山獄から釈放された松陰は松下村塾を開き高杉晋作や桂小五郎、伊藤博文ら幕末から明治維新にかけて活躍する人物を輩出した。傑出した人材を輩出して順風満帆と行きたかったところだが、ここで松陰の天皇観や思想により悪い意味での「狂」に陥り再びとらわれの身となった。
第四章「冬」
再び野山獄に投獄され、後に江戸に引き渡された。当時の江戸は井伊直弼大老による「安政の大獄」の真っ只中にあり、松陰も例外無く死罪とされた。
第五章「春、再び」
その日のうちに処刑(斬首刑)は執行され松陰は29の若さで帰らぬ人となった。しかしこの松陰の熱き思いは松下村塾の門下生に伝わり、明治維新への原動力となった。さらに吉田松陰の人とことばはあれから150年近く経った今でも私たちの心を揺り動かしている。
吉田松陰は時代の開拓者のひとりであったことは誰も否めることはできないだろう。そして松陰を心酔,もしくは尊敬するものたちがこれからの日本を引っ張っていくことだろう。

  「かくすれば かくなるものと 知りながら
               やむにやまれぬ 大和魂(p.181より)」

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