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反骨のコツ

反骨のコツ (朝日新書 69) 反骨のコツ (朝日新書 69)
團藤 重光 伊東 乾

朝日新聞社  2007-10-12
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「反骨」というと私としては良い響きである。私自身神奈川に住み始めてからあまりTVを見なくなった。北海道にいたときはローカル番組などで自分のみたい番組があったのだが神奈川(もとい東京)ではそういった番組も流れない(流れても数ヶ月〜数年前のすでにみたやつである)。在京キー局は一部の番組以外面白くないばかりであまり見たくないというのが本音である。北海道に帰ったときどこかの番組を見ていた時、「東京メディアに対する反骨精神」というのがあった。私自身在京メディアは「偏向報道の伏魔殿」という考えを捨てていない(むしろ様々な本によって事実といってもいいだろう)。それに過度の一極集中も私自身大嫌いである。東京ばかりが目立ちすぎていてほかの所は寂れっ放し。これでは地方が元気にならない。というより霞が関の官僚はそれを求めていないだろう。既得権益を逃したくないのだから。
かなり脱線してしまった。本書は最高裁判事、東大法学部長を歴任した「日本刑法の父」と言われる團藤重光氏と東大准教授である伊東乾氏の対談本である。
第1章「反骨から見る日本国憲法」
現在の日本国憲法はGHQによってつくられたと言われている。この憲法第一条には天皇について書かれているが、マッカーサーは日本に到着した当時は天皇制廃止を画策していた。しかしマッカーサーは昭和天皇との会見の時にその考えを改めた。天皇制を維持したうえで憲法草案にあたった。ちなみに東京裁判ではキーナン首席判事はマッカーサーの移行により天皇免訴の理由を東条英機から引き出そうとしたが判事側はウェッブ裁判長をはじめ何人かは天皇訴追に積極的であり、検事側にも天皇訴追をという意見がいた。キーナンと東条の駆け引きによりようやくその理由を引き出しマッカーサーは天皇訴追を決めたといういきさつである。
さらに国民投票法や自衛隊についても言及している。團藤氏は護憲派であるようだ。
第2章「死刑廃止は理の当然」
第3章「決定論をはね返せ」
日本の死刑廃止論議は非常に揺れており光市母子殺害事件(差し戻し控訴審は死刑判決)では被害者感情が非常に尊重され約8,000件にも及ぶ懲戒請求が出された。その一方で死刑存置か廃止かという議論に水を差すかのように国連の人権委員会では「死刑廃止の検討をすべき」との勧告が出された。国際事情で即死刑廃止や死刑停止のモラトリアムをつくることほど危険なものはないのは置いといて、このころ国連やEUは捕鯨にしろ、禁煙にしろ、環境問題にしろ、ポルノにしろ、この死刑廃止論議にしろ、何かと日本に対して圧力をかけてくる。そのことを考えると「グローバル化」という言葉で思想面、体制面の植民地化を行っているのではないかという考えも捨てきれない。そのことから前述のような譲歩は危険だと思っている。むしろ死刑廃止にする前にやる段階はいくつもある。例えば終身刑を入れる、刑罰制度を見直しを行う。「憲法九条」は改正しない憲法改正(ここで言うのは「恩赦・特赦について」)も行ったうえでというのが私の条件である。ゆくゆく死刑廃止はまぬかれない状況に立たされるのは明白であるが、その前段階としてやるべきことはまだまだ残っている。本書でも書かれているがなぜ元判事が死刑廃止論者が多いのかというと判決の時に死刑を言い渡すことほど神経や命が擦り切れることはないほどである。とりわけ最高裁の判事はそれが如実に出ており、團藤氏自身判決において傍聴席から「人殺し」と言われたことがきっかけであるという。團藤氏は同じく裁判員制度には反対であるが最大の要因はこれにあるという(ちなみに井上薫氏も同じ意見である)。さらにその終身刑・無期懲役にも異議を唱えているものもおり、強盗の前科を持っているクロード・ルーカスは、「刑期は20年以下とすべきである。それを超えてしまうと新たな人生を再開できない(p.116より)」と主張している。團藤氏のおっしゃるとおり日本では到底あり得ない、相容れられない主張である。それにも大きな理由がある。現在の刑務所事情、及び再犯率を照らし合わせても、どんなに重い刑罰を受けても人生をやり直ししたうえで再犯せずに人生を全うできるのかとルーカス氏に問いたい。日本では刑務所は他国に比べてそれほど劣悪ではない。それに再犯率は日本は6割と高い。それで人生を再開できるという詭弁はおかしく、犯罪はさらに増えることだろう。そして少し気になったのは東条英機の自殺未遂に関してである。團藤氏は「こめかみを撃った(p.115より)」と主張しているがこれは明らかな間違いで本当は胸、特に心臓に近いところを撃った。この理由については義理の息子である古賀陸軍中佐が自殺した時は拳銃を口にくわえて自殺した時に脳などが飛び散り原形を度止めないほどであったが、東条は見せしめを予想してあえて撃った。これがいきさつである。
第4章「裁判員制度は根無し草」
裁判員制度は来年5月21日にスタートする。もうすでに撤回不可能な状態までいっているため廃止は基本的に不可能と言っていい。但し、これから裁判員制度についての改正が頻繁に行われることを私は望む。英国や米国では「陪審員制度」が設けてありそれに似たような形となるが、裁判員制度で対象となる事件は確定に近いと言えど死刑か無期懲役に値するような殺人事件を取り扱うので裁判員自身も負担が大きい(ちなみに裁判官の負担は軽くなるそうだが、それでもたかが知れている)。裁判員制度廃止論の理由として挙げられるのが前述のような理由に加え、法律を学んでいないものが感情的に極刑を出すという法律関係者の危惧があることもまた一つである(私は「餅は餅屋理論」と呼んでいる)。さらに守秘義務も憲法(思想・良心・表現の自由)に抵触するのではないかという危惧もある。
第5章「憲法九条と刑法九条」
憲法九条はもうすでに認知されきっているためここでは明記しないでおく。刑法九条については知っている人はあまり多くないため明記しておく。刑法九条はこのような明文である。
第九条  死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
つまり刑法九条改正論者は大概は「死刑廃止論者」であると考えてもいい。
第6章「お悩み解決は團藤説で」
第7章「革命のコツ・團藤陽明学」
第8章「若者よ、正義の骨法を掴め!」
ここでは刑法から離れて團藤氏自身の経験からの指南に変わる。まず表題の「反骨」精神のすすめについてである。團藤氏に言わせれば「不満を持つ子が伸びる」というがそのような精神を育てるには「陽明学」というのが書かせない。私自身この「陽明学」について勉強したいものだがそれに関する面白い本がないというのが実状である。「陽明学」について分からない人もいるのでちょっとここで説明する。
「陽明学」は中国の明朝の時代に起こした儒教の一派で、孟子の「性善説」の系統である。この陽明学の根本思想として
「心即理」…内情そのものが外在する事事物物の「理」であること
「致良知」…「良知(心のうちにある道徳のこと)」を全面的に発揮すること
「知行合一」…知ったことを行動に示すこと
「万物一体の仁と良知の結合」…人も含めて万物は根元が同じであると考え、自他一体とみなす思想と良知の結合を表す
「事上磨錬」…日常の生活・仕事の中で良知を磨く努力をしなければならないこと
以上の5つがある。とりわけ「知行合一」はビジネス書において重要なファクターである。知ったことを実践することにより価値が生まれるのだから。
「反骨」という言葉は響きがいい。当然反骨精神というのは養わなければいけないが、それをどのように養うのかというのは「陽明学」であった。陽明学はこれからのビジネスの上でも役に立つものであることがよくわかった。團藤氏自身も陽明学に関することを出版しようとお考えである。團藤氏の次回作に期待したい。

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