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つなげる力

つなげる力 つなげる力
藤原 和博

文藝春秋  2008-09-10
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本書は橋下大阪府政の教育特別顧問に就任した藤原和博氏が「夜スペ」など行った教育改革について書かれている。ニュースなどで教育学者や組合などが批判した「夜スペ」であるが自分もあまりよくわからなかったのでこれも同時に見てみようという思いで読んだ。
まず第1章は地域改革、そして学校改革について書かれている。実際これについてはマクロな改革ではあるが非常に面白い。とりわけ「失敗を許す寛容さ」というのは今の教育にかけているのではないだろうか。むしろ「失敗を許さない」という狭量さが日本の教育をつぶしているような気がしてならない。
第2章はいよいよ藤原氏が提唱した教育体系の全貌について書かれている。悪妙高き「夜スペ」というイメージを刷り込まれていただけに本書で払拭したかったのだが、まさに完全払拭に至ったといってもいい。これはまさに全国で実践すべきものである。実際藤原氏が行ったものは中学校3年間における地域学習の一環であったが、これがはまっているように思えてならない。むしろ日本の教育は学校や日教組主導で行われているが本当の教育は地域が一体となって子供を育てることこそ日本の教育の在り方であるが、戦後そういう概念が希薄化しているように思えてならない。もっと言うと今はモンスター・ペアレントの急増によってそれの在り方についても問われなければならないところまで来ているのだが日教組や文科省はほとんど何も行っていない。むしろ目先の統計にこだわりすぎているような感じがしてならない。さらに言うとイギリス式やフィンランド式にこだわりすぎていて日本独自の教育の在り方を見失っているとしか言いようがない。そして生徒と向き合う時間を邪魔する悪弊を取り除いたということも著者の功績と言えよう。さらに著者はこう述べている、
「マスコミの一時期の集中砲火や不勉強な物言いが、このような生徒を育ててくれるなら、もっとたたかれてもいいなとさえ思ってくる」
皮肉とも見て取れるような記述だが、でも私のような人でも批判は多く言うし皮肉もたまには言う。しかしある事象を糾弾するものもあるが、中には風穴として改善策はこうではないのかというものを出すこともある。それが助力になるのであればいいと思うが、あくまで私は「書き捨て屋」といういかにもおめでたいような身分なのでそういうことを言っても無視してくださいとしか言いようがない。
第3章は「正解のない問題に取り組む」。PISAのリテラシーについてここで述べられている。現在の日本の教育がこのリテラシーに反映しているのかというとほとんど当てはまらないと言っていい。日本の教育は討論や作文は行うにしてもわずかしか行われない。ほとんどは公式や読解力を磨く、そしてテスト行うということだけであろう。でも本当の「教育」というのはそれではほとんど役に立たない。今まで貯め込んだ情報をいかに使い考えていくかということが求められている。現在の日本の教育はそれが大きく欠落しているといってもいい。小学校から高校までの期間の中で上に行けばいくほど欠落しているのが目に見えて出てくる。なぜかというと「受験」があるからだ。
第4章は欠落した「情報編集力」をどう磨いたらいいだろうかという方法を伝授している。これはまさに体系的で面白かった。なんといっても「負の体験をおそれるな!」は非常に強く共感した。負の体験があるからでこそ成功がある。成功を成し遂げるためにはどれだけ多くの失敗を積むことができるのか、そしてその失敗をどのように利用するのかに限る。これこそ教育を行うにあたっての原点と言えよう。
第5章は「子供たちと世界をつなげる」であるが、現在の日本の教育方針からして世界につなげられるのだろうかというと残念ながらつなげられないだろう。ただし全くないというわけではないが、学んだ者のほとんどが実社会で役に立たないというのが現状である。では社会に出るにあたっての教育というのは実際にあるコト(もしくはモノ)を考える、そして意見をする、紙に書いて主張するということが大事になってくる。そうなるとそれを行えるのは論文であったり、作文であったり、感想文であったり、主張する出言うと弁論大会や討論と言ったところだろう。でもそれを行うことによって考える力というのが身に付けられる。本書に書かれている検定試験や作文問題はぜひやってみたらいいかもしれない。私たち大人だったらどんな答えを出すのだろうか。
第6・7章はビジネス論であるが実際の社会においてビジネス本がよく出ているが学校でこういった教育を行って土壌を築かせるというのもいいかもしれない。
迷宮入りしつつある日本の教育の在り方に一つの光明が見えた1冊である。大阪は全国学力テストで下位に沈んだが著者を特別顧問に就いたことによりどのような効果が表れるのか見物である。

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